他業種からの参入
保険代理店・FPが、相続の相談に買取を足す。査定はできる。税務相談はできない。
相続や終活の相談を受けていると、預金や保険の話の中に、物の話が混ざってきます。「母の指輪や時計は、どうしたらいいか」「家財はいくらで見ればいいか」。答えられると、相談の入口が広がります。ただし、FPや保険代理店にできることと、できないことがあります。その線引きから書きます。
安場 達也古物査定の窓口 代表
買取業界歴15年以上。査定の現場から店舗の管理者、そして経営者まで、同じ道を順番に通ってきました。
北海道から沖縄まで、開業と店舗運営の支援実績があります。
大阪府公安委員会 古物商許可 第62229R076686号
公開 2026年10月10日
更新 2026年10月10日
この記事は業者向けです。
保険代理店、独立系のファイナンシャルプランナー(FP)など、相続や終活のお金の相談を受けている方に向けて書いています。
先に結論安場さん
- FP・保険代理店が足せるのは、動産の査定(値段の目安を伝えること)、買取、信頼できる先へのつなぎの3つです
- 品物を買い取って売るなら古物商許可が要ります。
値段を見て伝えるだけなら、売買をしていないので許可の話にはなりません
- 相続税の申告での家財の評価をどうするか、という個別の税務相談は、税理士でなければできません(税理士法第52条)。
無償でも同じです
- 相続税の評価では、家財は1個または1組ごとが原則で、1個5万円以下の家庭用動産は一括で評価できます(財産評価基本通達128)。
値段は売買実例価額・精通者意見価格等を参酌します(同129)
- お客様の家で買えば訪問購入。
査定を頼まれただけで、買取の勧誘を頼まれたことにはなりません
相続・終活の相談で、物の話が出る場面
物の話が出るのは、財産を一覧にするときと、遺品を片付けるときの2つです。
保険金の請求、相続の手続き、老後の資金の相談。
お金の話をしていると、次のような質問が混ざってきます。
財産を一覧にするとき
「家財は、いくらと書けばいいですか」「母の宝石や時計は、財産に入りますか」。
値段の見当がつかないことが悩みです。
遺品を片付けるとき
「指輪や時計を、どこに出せばいいですか」「捨てていい物と、だめな物の区別がつかない」。
出す先が分からないことが悩みです。
FPや保険代理店は、すでにお客様の家族構成と、お金の全体像を知っています。
物の話にも答えられると、相談の入口がひとつ増えます。
ただし、ここから先は、資格と許可の線引きがある話です。
家財は、相続税でどう評価されるか
家財などの一般動産は、売買実例価額や精通者意見価格等を参酌して、1個または1組ごとに評価するのが原則です。
国税庁の財産評価基本通達の、動産の項目で確かめられることを並べます(2026年10月10日確認)。
| 論点 | 財産評価基本通達で確かめられること |
| 評価の単位 | 一般動産は、原則として1個または1組ごとに評価する。 ただし、家庭用動産などで1個または1組の価額が5万円以下のものは、一世帯ごとに一括して評価できる(通達128) |
| 評価の方法 | 原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する(通達129) |
| それが分からないとき | 同じ種類・規格の新品の課税時期の小売価額から、製造の時から課税時期までの償却費の合計額または減価の額を引いた額で評価する(通達129ただし書) |
家財一式とまとめられるのは、1個5万円以下のものです。
指輪、時計、ブランドバッグ、骨董。
1点で5万円を超えるかもしれない品は、まとめずに1個ずつ見る必要が出てきます。
そして評価の方法に、中古の取引の値段(売買実例価額)と、その品をよく知る人の意見(精通者意見価格)が出てきます。
中古の品の値段を知っていることが、評価の考え方の中に入っているということです。
税理士や司法書士の側から見た動産の評価は、相続で出る動産の評価にまとめています。
できること、できないことの線引き
FP・保険代理店ができるのは、値段の目安を伝えることと、許可を取ったうえでの買取で、申告での評価額の決め方を個別に助言することはできません。
分け目になる法律は2つです。
| やること | できるか | 根拠 |
| 品物を見て、中古でいくらで取引されているかを伝える | できる(売買をしないので、許可の話にはならない) | 古物営業法第2条(古物営業は売買・交換、またはその委託を受ける営業) |
| 品物を買い取って、売る | 古物商許可が要る | 古物営業法第3条 |
| お客様に代わって売る(委託を受けて売る) | 古物商許可が要る | 古物営業法第2条第2項第1号 |
| 「この家財は申告でいくらにすべきか」と個別に税務相談に答える | できない(税理士の業務。無償でも) | 税理士法第2条・第52条、税理士法基本通達2-1(有償であることを要しない) |

伝え方を分けておきます
「中古では、このくらいで取引されています」は、品物の値段の話です。
「申告では、この額で書けば大丈夫です」は、税務の話です。
後者に踏み込みそうになったら、税理士につなぐ。
その一言を、先に決めておきます。
遺産分割の前は、相続人みんなの物です
相続人が何人かいるとき、相続財産はその共有になります(民法第898条)。
相談に来た方が相続人の1人でも、その方の一存で売ってよい物とは限りません。
買い取る前に、誰が売り主になるのか、相続人の間で話がついているかを確かめます。
査定だけ・買う・つなぐ
足し方は、査定だけをする、自社で許可を取って買う、信頼できる買取店につなぐ、の3つです。
いちばん気をつけるのは、査定と買取を同じ人がやるときの見え方です。
| 形 | 古物商許可 | 気をつけること |
| 査定だけ(値段の目安を伝える) | 要らない | 値段の根拠を見せる。 外れたときの責任の範囲を、先に伝えておく |
| 自社で買う | 要る | 自分で値段を付けて、自分で買う形になる。 ほかの店でも見てもらってよいと、こちらから伝える |
| つなぐ(買取店を紹介する) | 紹介する側は売買をしないので、許可の話にはならない | 紹介する先が、許可と家に伺う買取の決まりを守っているかを確かめる |
FPや保険代理店の仕事は、お客様の側に立って助言することで信頼されています。
自分で値段を付けて、自分で買う形は、その立場と食い違って見えやすい。
当窓口では、自社で買う場合ほど、比べてもらってよいと先に伝えることを勧めています。
お客様の家で買うなら、訪問購入です
営業所以外の場所で品物を買う取引は、特定商取引法の訪問購入にあたります(第58条の4)。
頼まれていない人に、家で買取の勧誘をすることは禁じられています(第58条の6第1項)。
消費者庁の通達では、査定だけを頼まれた場合は、勧誘を頼まれたことにはならないとされています。
相続の相談で伺った家で、「この時計、うちで買い取れますよ」と持ちかける。
これは、頼まれていない勧誘になりえます。
書面と8日間のクーリングオフは出張買取のクーリングオフに整理しています。
買取業界専門家・安場さんの回答
安場さんは、買取で一番損をしたのは偽物をつかんだことで、大きな損失になると答えています。
査定を足すなら、外れたときの怖さも知っておく必要があります。
買取業界専門家・安場さんの回答
一番損をした買取は、何ですか。
やはり、偽物をつかんだことです。
正直、ここでお伝えできないような失敗も多くしました。
損金の額もかなり大きいです。
買取事業で偽物をつかむことは、大きな損失になります。
査定だけの形でも、値段を伝えれば、お客様はその値段を信じて動きます。
見たことのない品は、その場で値段を言わない。
「確認して、後日お伝えします」と言える基準を、先に決めておきます。
始める順番
線引きを決め、形を選び、買うなら許可を取ってから、扱う品を絞って始めます。
- 税務の話の線引きを決める
値段の話はする、申告の話は税理士につなぐ。
つなぐ先の税理士を決めておきます。
- 査定だけ・買う・つなぐ、を選ぶ
相談の数が少ないうちは、つなぐ形からで十分です。
- 買うなら、古物商許可を取る
会社で取るなら、役員全員分の書類が要ります。法人で古物商許可を取るをご覧ください。
- 扱う品を絞る
最初は、相場が公開されている貴金属から。金・プラチナの売り先も先に決めます。
- 売り主と、家での運び方を決める
相続人の間で話がついているかを確かめる。
家ではこちらから勧めない。
書面を作っておきます。
お金の相談の中で、物の話にも答えられる。
それだけで、家族ごと任せてもらえる相談相手に近づきます。
よくある質問
- FPが相続の相談で、家財や貴金属の値段を伝えてもいいですか。
- 品物を見て、中古でいくらくらいで取引されているかを伝えることは、売買をしていないので古物商許可の話にはなりません。
ただし、相続税の申告でその品をいくらと評価すべきかを個別に助言することは税務相談にあたり、税理士でなければできません(税理士法第52条)。
無償でも同じです。
- 保険代理店が買取を始めるには、何の許可が要りますか。
- 品物を買い取って売る、またはお客様に代わって売るなら、古物商許可が要ります(古物営業法第2条・第3条)。
会社で申請する場合は、申請書に役員の氏名と住所を書き、役員全員分の書類をそろえます。
- 相続税で、家財はどう評価されますか。
- 国税庁の財産評価基本通達では、一般動産は原則として1個または1組ごとに、売買実例価額や精通者意見価格等を参酌して評価します(通達128・129)。
家庭用動産などで1個または1組の価額が5万円以下のものは、一世帯ごとに一括して評価できます。
申告での扱いは税理士にご確認ください。
- 相続人の1人から頼まれた遺品を、買い取ってもいいですか。
- 相続人が何人かいる場合、遺産分割の前の相続財産は相続人の共有です(民法第898条)。
頼んできた方の一存で売ってよい物とは限らないため、誰が売り主になるのか、相続人の間で話がついているかを確かめてから買い取ってください。
- 相談で伺った家で、買取の話をしてもいいですか。
- こちらから持ちかけるのは避けてください。
営業所以外の場所で品物を買う取引は訪問購入にあたり、頼まれていない人に家で買取を勧誘することは禁じられています(特定商取引法第58条の6第1項)。
消費者庁の通達では、査定だけを頼まれた場合は、勧誘を頼まれたことにはならないとされています。
- 自分で査定して、自分で買うのは問題になりますか。
- 古物商許可を取っていれば、買うこと自体はできます。
ただ、お客様の側に立って助言する立場の人が、自分で値段を付けて自分で買う形は、お客様から見て食い違って見えやすくなります。
当窓口では、ほかの店でも見てもらってよいと先に伝えることを勧めています。
この記事は2026年10月10日時点の法令と公的機関の案内をもとに書いています。税務の扱いは税理士に、許可の手続きは管轄の警察署にご確認ください。
出典:国税庁「財産評価基本通達 第6章 動産 第1節 一般動産」(128・129)、税理士法(e-Gov法令検索)(第2条・第52条)、国税庁「税理士制度 問2-1」(基本通達2-1)、古物営業法(e-Gov法令検索)(第2条・第3条・第5条)、民法(e-Gov法令検索)(第898条)、特定商取引法(e-Gov法令検索)(第58条の4・第58条の6)、消費者庁「特定商取引に関する法律等の施行について」(通達)(いずれも2026年10月10日確認)。
自社で買う場合の伝え方は当窓口の考え、「買取業界専門家・安場さんの回答」は2026年10月5日に当社が聞き取った内容です。