本物と偽物
査定はどう身につけるか。
独学で伸びない部分があります。
買取の査定は、調べれば分かる部分と、手に取らないと一生分からない部分に分かれます。この線引きを知らないまま独学を続けると、時間だけが過ぎます。どこまでが本や動画で足りて、どこからが違うのかを書きました。
安場 達也古物査定の窓口 代表
買取業界歴15年以上。査定の現場から店舗の管理者、そして経営者まで、同じ道を順番に通ってきました。
北海道から沖縄まで、開業と店舗運営の支援実績があります。
大阪府公安委員会 古物商許可 第62229R076686号
公開 2026年9月8日
更新 2026年9月8日
先に結論
- 知識は独学で足ります。刻印、型番、相場の調べ方は本と動画で身につきます
- 手ざわり、重さ、縫い目の質は、実物でしか分かりません
- 偽物を判断するには、本物と偽物を並べて触った回数が要ります
- 学ぶ順番は貴金属 → ブランド → 時計 → 宝石です
独学で伸びる部分と、伸びない部分
独学で足りる実物が要る
刻印の意味K18、750、585が何を指すか。書いてあることを覚えるだけです
刻印がない場合の判断刻印が消えている、そもそも打たれていない。ここからは重さと反応で見ます
型番と定価調べれば出ます。記憶する必要すらありません
状態の読み方この傷はいくら引くのか。写真では判断できません
相場の調べ方どこを見れば実売が分かるか。手順として覚えられます
相場が読めない品の扱い初めて見る品にどう向き合うか。判断の型の問題です
偽物の特徴の一覧縫製が粗い、金具が軽い。文字としては読めます
その粗さがどの程度か基準になる本物を触っていないと、粗いかどうかが分かりません
右側に共通しているのは、比較の基準です。
重い、軽い。粗い、細かい。これらは全部、比べる対象があって初めて意味を持ちます。
なぜ実物が要るのか
具体例を挙げます。
金具の重さ
ブランドバッグの偽物は、金具が軽いことが多い。
これは有名な話です。
ところが本物の金具を持ったことがなければ、
手にした金具が軽いのかどうか分かりません。
文字で読んでも、判断には使えません。
革のにおいと張り
本物の革は、時間が経っても独特の張りが残ります。
偽物は最初から違います。
これは写真にも動画にも写りません。
嗅いで、押して、初めて分かる差です。
そして、もう一つ大きい理由があります。
いまの偽物は、写真では見分けがつきません。
昔の偽物は、遠目にも分かるものが多くありました。
いまは違います。
刻印もシリアルも再現され、
並べて写真を撮れば、どちらが本物か分からないところまで来ています。
だから、判断の材料が視覚以外に移っています。
重さ、におい、金具の動き、糸の張り。
これらは実物を手に取る以外に確かめる方法がありません。
並べれば分かります。片方だけ見せられたときに分かるかどうかが、実務です。
学ぶ順番
商材には、身につけやすい順番があります。
1 貴金属
最初はここです。相場が毎日公開されているため、売り先の値段が読めます。
刻印と比重という客観的な根拠があり、判断が感覚に頼りません。
どの現場でも出るので、覚えた分がそのまま回数になります。
2 ブランド品
金額が大きく、扱う機会も多い。
ただし偽物の精度が最も上がっている領域です。
ここからは、本物と偽物を並べて触る経験が要ります。
3 時計
型番ごとに相場が大きく違い、
同じモデルでも製造年、箱と保証書の有無で数十万円動きます。
調べる範囲が広いので、ブランド品の型ができてからのほうが早く進みます。
4 宝石
最後です。石の等級で桁が変わるため、
独学で最も外しやすい商材です。
ここだけは、鑑別の知識と、実物を見た回数の両方が要ります。
遠回りになる学び方
よくある3つを挙げます。
-
全部の商材を同時に覚えようとする。
どれも中途半端になります。
1品目を判断できる状態にしてから次へ行くほうが、結果的に早く広がります。
-
知識を集め続けて、値段をつけない。
査定は知識の量ではなく金額を出す作業です。
いくらで買うかを言えるようになって初めて、意味を持ちます。
-
お客様の品物で練習する。
これが一番損をします。
安く買えば信用を失い、高く買えば赤字が出る。
どちらも取り返すのに時間がかかります。
身につけるべきは、分かることを増やすことではありません
分からないと判断できることです。
現場では必ず、見たことのない品が出ます。
そのときに「分からないので買いません」と言えるかどうか。
これができる人は事故を起こしません。
逆に、なんとなく値段をつけてしまう人が、大きな損を出します。
査定の力とは、判断できる範囲と、判断できない範囲を自分で線引きできることです。
よくある質問
- 査定は独学で身につきますか。
- 知識の部分は独学で足ります。刻印の意味、型番、相場の調べ方は本や動画で身につきます。一方、金具の重さ、革の張り、縫製の細かさといった比較が必要なものは、本物を手に取ったことがなければ判断できません。この線引きを知らないまま独学を続けると時間だけが過ぎます。
- どの商材から学ぶべきですか。
- 貴金属です。相場が毎日公開されており、刻印と比重という客観的な根拠で判断できるため、感覚に頼りません。どの現場でも出るので覚えた分がそのまま回数になります。次にブランド品、時計、最後に宝石という順番が、身につけやすさの順です。
- なぜ写真や動画では判断できないのですか。
- いまの偽物は刻印もシリアルも再現されており、写真では本物と見分けがつかないところまで来ています。判断の材料が視覚以外に移っているためです。重さ、におい、金具の動き、糸の張りといった要素は、実物を手に取る以外に確かめる方法がありません。
- 本物と偽物を比べる機会はどう作ればいいですか。
- 自分で偽物を入手して比べるのは現実的ではありません。実物を並べて触れる場に行くのが最短です。当社では本物と偽物の両方を用意して手に取っていただく形をとっています。一度並べて触ると、文字で読んでいたことが判断として使えるようになります。
- 実務経験がないと査定はできませんか。
- 経験がないと最初は判断できませんが、必要な経験の量は商材によって大きく違います。貴金属であれば手順が明確なので短期間で組み立てられます。宝石は石の等級で価格が桁で変わるため、独学で最も外しやすい商材です。扱う範囲を絞れば、経験がなくても始められます。
- 査定で一番大事なことは何ですか。
- 分からないと判断できることです。現場では必ず見たことのない品が出ます。そのときに分からないので買いませんと言える人は事故を起こしません。逆に、なんとなく値段をつけてしまう人が大きな損を出します。判断できる範囲と、できない範囲を自分で線引きできることが査定の力です。
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この記事は当社の研修および買取の実務をもとに書いています。商材ごとの難易度や必要な経験は、扱う品や個人によって異なります。