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原状回復の現場に残った物を、買い取る前に決めること。

退去のあとの部屋や店舗に、物が残っている。「全部処分してください」と言われて、処分費を見積もる。その中に、値段が付く物が混ざっています。ただ、工事を頼んだ人が、物の持ち主とは限りません。原状回復と内装解体の会社に向けて、買い取る前に決めることを書きます。

先に結論安場さん
  • 原状回復の会社に工事を頼むのはオーナーや管理会社ですが、残った物の持ち主は、借主か、亡くなった場合は相続人です。
    依頼主に「処分して」と言われても、それだけでは買い取れません
  • 買い取って売るには古物商許可が要ります。
    まったくの無償や、処分の手数料をもらって引き取った物を売るだけなら古物商許可は要らない、と愛知県警察は案内しています
  • ただし処分費をもらって運ぶ物は廃棄物と判断されやすく、廃棄物の許可は別です。
    内装解体の廃材と、部屋に残った家財では、許可の種類も違います
  • 買うなら、売り主・代金の行き先・同意の書面の3つを、着工前に依頼主と決めておきます

工事を頼んだ人と、物の持ち主は違う

原状回復の依頼主はオーナーや管理会社でも、部屋や店舗に残った物の持ち主は、多くの場合、出て行った借主か、その相続人です。
管理会社やオーナーの側から見た話は管理会社が残置物を買い取るときに書きました。
ここでは、工事を請け負う側から見て、誰から買うことになるのかを分けます。

現場物の持ち主買うときの売り主
住宅の退去。
借主は健在で、荷物を置いて出た
借主借主。
依頼主ではない
住宅の退去。
借主が亡くなった
相続人(国土交通省のガイド)相続人。
依頼主ではない
店舗・事務所の退去。
テナントの会社が什器を残した
テナントの会社テナントの会社
オーナーが自分で置いていた設備や備品オーナーオーナー(依頼主と同じ)

依頼主と持ち主が同じなのは、最後の行だけです。
それ以外は、依頼主に「処分して」と言われても、原則として依頼主には売る権限がありません。
物を売れるのは持ち主で、代金を受け取るのも持ち主です。

処分を頼まれた物を、黙って売らない 処分の依頼として預かった物を、持ち主の同意なく売ると、あとで持ち主から返還や代金を求められるおそれがあります。
借主が残置物の所有権を放棄する書面を出している、契約に残置物の取扱いの定めがある、といった事情で扱いは変わります。
その書面があるかどうかを、依頼主に確かめてから動きます。
判断が難しい案件は、弁護士等に確認してください。

着工前に、依頼主と決めておく3つ

決めておくのは、誰が売り主になるか、代金を誰に渡すか、それを示す書面を誰が出すか、の3つです。
現場に入ってから決めると、仕分けの手が止まります。
見積りを出す段階で、依頼主に次のことを聞いておきます。

この表を見積書に添えて、依頼主に返してもらうだけでも、あとの揉め事が減ります。
値段が付くかどうかを見るのは、そのあとです。

現場に残された品物を仕分けているところ
処分の山に入れる前に、値段が付く物と、持ち主に返す物を分けます。

古物商許可と、廃棄物の許可

持ち主から買い取って売るには古物商許可が要り、処分するために運ぶ物には別に廃棄物の許可が要ります。
人から物を買い取って売ることは、古物営業にあたります(古物営業法第2条・第3条)。
建設業の許可や解体工事業の登録とは別に、古物商許可が要ります。

やること古物商許可廃棄物の許可
持ち主から買い取って、売る要る買った物は商品として扱う
まったくの無償で引き取った物を売る要らないと愛知県警察が案内引き取った物が廃棄物にあたれば要る
処分の手数料をもらって引き取った物を売る要らないと愛知県警察が案内多くの場合要る(処分費をもらって運ぶ物)
内装解体で出た廃材を処分する関係しない産業廃棄物として扱う(元請が自社で運ぶ場合を除き、許可業者に委託)

愛知県警察は、売り主に何らかの利益が生じる場合は許可が必要で、まったくの無償で引き取った物や、処分手数料をもらって引き取った物を売る場合は許可は要らない、と案内しています。
ここで気をつけたいのは、古物商許可が要らないことと、何の許可も要らないことは違うという点です。
環境省は、使用済みの家電について、無料で引き取られる場合や安く買い取られる場合でも、直ちに有価物と判断すべきではないと通知しています(2012年3月)。

内装解体で出る廃材 建設工事に伴って出る廃棄物は、注文者から直接工事を請け負った元請業者が排出事業者になります(廃棄物処理法第21条の3)。
多くは産業廃棄物として、今の処分の流れで扱っているはずです。
部屋に残った家財 工事で出たごみではなく、前の住人が残した物です。
家庭の物を処分として運ぶには、市区町村の一般廃棄物の許可(または委託)が要ります。
産業廃棄物の許可では運べません。
扱いは自治体に確かめてください。

つまり、買取を足すというのは、処分の流れを変えることではありません。
処分の山に入る前に、持ち主から買う物を抜き出すということです。
回収と買取の許可の違いは、不用品回収で捨てている物に、値段をつけるにもまとめています。

法人から買うとき、個人から買うとき

テナントの会社から事業用の什器を買う場合は訪問購入の決まりがかからず、個人の住まいで買う場合は原則かかりますが、どちらも本人確認と帳簿の記録は原則として要ります。
特定商取引法の訪問購入の決まりは、売る側が営業のために、または営業として結ぶ契約には適用されません(第58条の17)。

店舗・事務所の退去で、会社から買う 訪問購入の決まりは、原則かかりません。
古物営業法の本人確認と帳簿は要ります(対価の総額が1万円未満の取引は、一部の品を除きかかりません)。
会社から買うときは、来ている担当者がその会社の人で、売る権限があるかを確かめます。
住宅の退去で、個人から買う 相手の自宅など、営業所以外の場所で買えば、原則として訪問購入です。
こちらからの勧誘の禁止、書面、8日間のクーリング・オフがかかります。
自動車・家具・持ち運びが難しい家電・書籍などは対象外の品で、住まいを引き払う売り主の側から頼まれた取引も、書面やクーリング・オフの多くがかからない形として定められています(特定商取引法施行令第34条・第37条、同施行規則第150条)。
くわしくは出張買取のクーリングオフに。
受け取る場所にも、決まりがあります 古物商が古物商以外の人から買い受けるために品物を受け取れるのは、自社の営業所か、相手の住所・居所です(古物営業法第14条)。
借主が退去したあとの空き部屋や、亡くなった方の部屋が、売り主の住所・居所にあたるとは限りません。
空いた現場で受け取って買う形を取る前に、管轄の警察署に確かめてください。
本人確認のやり方は古物商の本人確認に書きました。

買取業界専門家・安場さんの回答

安場さんが一番損をした買取として挙げたのは、偽物をつかんだことです。
持ち主に由来を聞けない残置物を買う側に回る前に、買取業界の専門家である安場さんに聞きました。

買取業界専門家・安場さんの回答 一番損をした買取は、何でしたか。

やはり、偽物をつかんだことです。
正直、ここでお伝えできないような失敗も多くしました。
損金の額も、かなり大きいです。

買取事業で偽物をつかむことは、大きな損失になります。

残置物は、持ち主がその場にいないことが多く、由来の分からない物が混ざります。
判断がつかない物は買わない、または専門の業者に見てもらってから決めるのが安全です。
偽物を買ってしまった場合の流れは、偽物を買ってしまったらにあります。

始める順番

見積りの段階で持ち主と代金の行き先を決める書式を作り、古物商許可を取り、貴金属など相場が公開されている品から買い始めます。

  1. 見積書に、残置物の確認表を添える 持ち主は誰か、同意の書面はあるか、代金を誰に渡すか。
    前の章の6つを、依頼主に返してもらう形にします。
  2. 古物商許可を取る 会社で取る場合は、役員全員分の書類が要ります。
    手数料は19,000円、審査は40日前後です。
    書類は法人で古物商許可を取るに。
  3. 処分の流れは、今のまま 廃材は今の産業廃棄物の流れで。
    部屋に残った家財の処分は、一般廃棄物の許可業者に任せる形を確かめておきます。
  4. 貴金属から買う 金・プラチナは壊れていても重さと刻印で見ます。
    相場が公開されていて、持ち主に値段の根拠を示しやすい品です。
  5. 依頼主と持ち主に、書面で報告する 何があり、何を買い、いくらで、誰に払ったか。
    処分した物と、返した物も並べます。

原状回復の会社に増えるのは、処分費の見積りの横に並ぶ買取の記録です。
誰の物を、誰の同意で、いくらで買ったか。
それを書面で示せることが、依頼主から次の現場を任される理由になります。

よくある質問

原状回復の工事で、オーナーから「残置物は全部処分して」と言われました。値段が付く物は買い取ってもいいですか。
オーナーが物の持ち主でなければ、オーナーの指示だけでは買い取れません。
退去した借主の物は借主の物、借主が亡くなった場合は相続人の物です。
持ち主の同意や、所有権を放棄する書面があるかを依頼主に確かめ、売り主と代金の行き先を決めてから買い取ります。
判断が難しい場合は弁護士等に確認してください。
残置物を無料で引き取って売るなら、古物商許可は要りませんか。
愛知県警察は、まったくの無償で引き取った物や、処分手数料をもらって引き取った物を売る場合は、古物商許可は要らないと案内しています。
ただし、処分費をもらって運ぶ物や、廃棄物にあたる物を運ぶには、廃棄物の許可が別に要ります。
迷う場合は管轄の警察署と自治体に確かめてください。
内装解体業者が持っている産業廃棄物の許可で、部屋の家財も運べますか。
運べません。
建設工事に伴って出る廃材は産業廃棄物として元請業者が排出事業者になりますが、前の住人が残した家財は工事で出たごみではありません。
家庭の物を処分として運ぶには、市区町村の一般廃棄物の許可か委託が要ります。
扱いは自治体に確かめてください。
店舗の退去で、テナントの会社から什器を買う場合もクーリング・オフはありますか。
特定商取引法の訪問購入の決まりは、売る側が営業のために、または営業として結ぶ契約には適用されません。
そのため、会社が事業用の什器を売る場合は、原則として訪問購入のクーリング・オフはかかりません。
古物営業法の本人確認と帳簿の記録は、原則として要ります。
買取代金を、原状回復や処分の費用と差し引いてもいいですか。
差し引くなら、物の持ち主の了承が要ります。
代金を受け取るのは持ち主で、工事の依頼主とは限らないためです。
誰に払い、何と差し引くかを、着工前に書面で決めておきます。
退去後の空き部屋で、前の借主から品物を受け取って買い取れますか。
古物営業法では、古物商が古物商以外の人から買い受けるために品物を受け取れるのは、自社の営業所か、相手の住所・居所とされています(第14条)。
退去後の空き部屋が売り主の住所・居所にあたるとは限らないため、その形で買う前に管轄の警察署に確かめてください。
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この記事は2026年10月10日時点の法令と公的な案内をもとに書いています。古物営業の許可・受け取る場所・本人確認は古物営業法第2条・第3条・第14条・第15条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000108)、無償や処分手数料をもらって引き取った物の販売の扱いは愛知県警察の古物営業のよくある質問(https://www.pref.aichi.jp/police/shinsei/sonota/qanda.html)、使用済家電の廃棄物該当性は環境省の報道発表(2012年3月20日 https://www.env.go.jp/press/14992.html)、建設工事に伴う廃棄物の排出事業者は廃棄物処理法第21条の3、入居者が亡くなったときの残置物の所有権は国土交通省「大家さんのための単身入居者の受入れガイド」第5版(https://www.mlit.go.jp/common/001338112.pdf)、訪問購入の決まりと適用除外は消費者庁の特定商取引法ガイド「訪問購入」(https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorpurchases/)と特定商取引法第58条の17・同施行令第34条・第37条・同施行規則第150条、1万円未満の取引の扱いは古物営業法施行規則第16条、申請手数料(19,000円)と審査期間(40日前後)は愛知県警察の案内によります(いずれも2026年10月10日確認)。個々の案件の扱いは、契約の内容と事情によって変わります。弁護士・管轄の警察署・自治体にご確認ください。

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