他業種からの参入
お寺が、檀家さんの物の相談に応える。買うか、つなぐか、を先に決めます。
終活、遺品、仏壇じまい。檀家さんから、物の相談を受けることがあります。「この指輪はどうしたら」「母の着物と時計、どこに出せばいいか」。答え方は2つです。自分で買い取るか、信頼できる先につなぐか。この記事は、お寺がその分かれ目で迷わないように、許可と決まりを順に整理します。
安場 達也古物査定の窓口 代表
買取業界歴15年以上。査定の現場から店舗の管理者、そして経営者まで、同じ道を順番に通ってきました。
北海道から沖縄まで、開業と店舗運営の支援実績があります。
大阪府公安委員会 古物商許可 第62229R076686号
公開 2026年10月10日
更新 2026年10月10日
この記事は、お寺(寺院)の住職・寺族・役員の方に向けて書いています。
檀家さんの終活や遺品の相談で、物の行き先を聞かれる立場の方が対象です。
先に結論安場さん
- お寺が檀家さんの品を買い取って売るなら、古物商許可が要ります。
信頼できる先を紹介するだけなら、古物の売買をしないので許可の話にはなりません
- 形は3つ。
つなぐ(紹介)、住職個人や別の会社で許可を取る、宗教法人で許可を取るです
- 宗教法人は、目的に反しない限り、公益事業以外の事業もできます(宗教法人法第6条第2項)。
行うなら、規則に事業の種類と管理運営を書き、規則の変更は所轄庁の認証を受けます(第12条第1項第7号・第26条)
- 檀家さんの家に伺って買えば訪問購入です。
こちらから売買を持ちかけない、書面、8日間の決まりがかかります
- 当窓口の考えとして、供養のために預かった品と、買い取る品は分けます
檀家さんから来る、物の相談
お寺に来る物の相談は、「捨てていいか」と「どこに出せばいいか」の2つにまとまります。
法事や月参りの折に、檀家さんから聞かれるのは、たとえば次のようなことです。
「母の指輪や時計、どこに出せばいいですか」
遺品の行き先の相談です。
売るのか、形見に残すのか。
決めるのは相続人の方です。
「仏壇をしまうけれど、中の仏具はどうなりますか」
供養の相談と、物の行き先の相談が、ひとつの話の中に混ざっています。
「自分が元気なうちに、着物や骨董を片付けたい」
終活の相談です。
売り主はご本人です。
どの相談も、お寺が信頼されているから来る相談です。
一方で、物の値段の話は、答え方を間違えると、その信頼に響きます。
だから先に、自分で買うのか、つなぐのかを決めておきます。
買う・つなぐ、3つの形
お寺が取れる形は、つなぐ、住職個人や別の会社で許可を取る、宗教法人で許可を取る、の3つです。
古物営業法は、古物を売買する営業をするには公安委員会の許可が要ると定めています(第3条)。
委託を受けて売買すること(代わりに売ること)も、古物営業に入ります(第2条第2項第1号)。
| 形 | 古物商許可 | 向いている場面 |
| つなぐ(買取店や専門の業者を紹介する) | お寺は売買をしないので、許可の話にはならない | 相談の数が少ない。 まず檀家さんの役に立ちたい |
| 住職個人・別の会社で許可を取る | 要る(個人または法人で申請) | 宗教法人の会計と、売買の会計を分けたい |
| 宗教法人で許可を取る | 要る(法人で申請) | 規則の変更と認証の手続きまで、責任役員で合意できている |
つなぐ形でも、どこにつなぐかは、お寺の名前で選ぶことになります。
檀家さんは、お寺が勧めた先だから安心して任せます。
つなぐ先は、許可を持っているか、家に伺う買取の決まりを守っているかまで確かめて選んでください。

無料で引き取った品を売る場合
まったくの無償で引き取った物を売るだけなら、古物商許可は要らないとする県警の案内があります(愛知県警察・熊本県警察)。
ただし、愛知県警察は、相手に何らかの利益が生じる場合は許可が要ると案内しています。
引き取る代わりに供養料を安くするなどの形は、許可が要る側に入りえます。
形が決まらないうちは、管轄の警察署に、実際のやり方を伝えて確かめてください。
宗教法人で古物商許可を取る場合
宗教法人は目的に反しない限り公益事業以外の事業ができ、行うときは規則に事業の種類と管理運営を書いて、規則の変更について所轄庁の認証を受けます。
宗教法人法の条文で確かめられることを、順に並べます(e-Gov法令検索、2026年10月10日確認)。
| 論点 | 条文で確かめられること |
| 事業ができるか | 宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。 収益が出たら、その宗教法人や公益事業などのために使う(宗教法人法第6条第2項) |
| 規則に書くこと | 第6条の事業を行う場合は、その種類と管理運営(収益処分の方法を含む)を規則に書く(第12条第1項第7号) |
| 規則を変えるとき | 規則で定める手続きをし、規則の変更について所轄庁の認証を受ける(第26条第1項) |
| 役員 | 宗教法人には3人以上の責任役員を置き、そのうち1人を代表役員とする(第18条第1項) |
| 古物商許可の申請書 | 法人の場合、名称・代表者の氏名、役員の氏名と住所などを書く(古物営業法第5条第1項) |
つまり、宗教法人で許可を取るなら、警察署への申請の前に、お寺の中の手続きがあるということです。
規則の変更、責任役員の合意、所轄庁の認証。
そのうえで、古物商許可の申請に、役員全員分の書類をそろえます。
法人で申請するときの書類の考え方は法人で古物商許可を取るに書きました。

先に、2か所に相談します
規則の変更は所轄庁(原則は都道府県知事、他の都道府県にも境内建物がある場合などは文部科学大臣・宗教法人法第5条)、許可の申請は管轄の警察署です。
宗教法人の規則を申請の書類としてどう扱うかは、警察署に、規則の写しを持って確かめるのが確実です。
事業で出た収益の税の扱いは、顧問の税理士に確かめてください。
住職個人で許可を取る形もあります。
個人の許可は、手数料が19,000円、申請の受付から概ね40日以内に許可か不許可の連絡が来ると熊本県警察は案内しています。
取り方は古物商許可の取り方をご覧ください。
供養と売買を分ける
当窓口が勧めるのは、供養のために預かった品は売らない、買い取る品は最初から買取として受ける、という分け方です。
お寺には、閉眼供養やお焚き上げのために、品物が預けられます。
その中に、値段が付く品が混ざっていることがあります。
供養として預かる品
供養のために預かった品は、供養のために扱う。
値段が付きそうでも、あとから売りに回さない。
買い取る品
最初に「買取です」と伝え、値段と書面を見せて、相手が決める。
供養の話と同じ場で混ぜない。
供養で預かった品が、あとで売られていたと分かれば、お寺そのものの信頼を失います。
値段が付く品だと気づいたら、預かる前に、相続人の方に伝える。
売るか、形見に残すか、供養するか。
決めるのは相続人の方です。
檀家さんの家に伺って買うなら、訪問購入です
お客様の家など、営業所以外の場所で品物を買う取引は、特定商取引法の訪問購入にあたります(第58条の4)。
買取の勧誘を頼まれていない人に、家で勧誘をすることは禁じられています(第58条の6第1項)。
消費者庁の通達では、ある品について頼まれて伺った場合でも、ほかの品の勧誘はできないとされています。
月参りで伺った家で、仏壇の横の時計を見て「それ、売れますよ」と言う。
これは、お寺の側から売買を持ちかけていることになります。
書面の交付と、書面を受け取った日から8日間のクーリングオフも含めて、決まりは出張買取のクーリングオフに整理しています。
買取業界専門家・安場さんの回答
安場さんは、お客様の家での買取は品物を譲っていただくことが多い一方、依頼された品以外への誘導は不招請勧誘にあたるものがあると答えています。
お客様の家に伺う買取について、買取業界の専門家である安場さんに聞きました。
買取業界専門家・安場さんの回答
お客様のご自宅に伺う買取で、気をつけることは何ですか。
お客様のご自宅に訪問するので、会話の中で、使っていない品物をいろいろお譲りいただくケースが多いです。
ただここは法律の観点があります。
依頼された品以外への誘導など、不招請勧誘にあたるものもあります。
法律違反をすると、古物商許可の取り消しなど、いろいろなデメリットがあります。
古物営業法やほかの法令・事例を、しっかり把握しておくことをお勧めします。
お寺は、もともと家に上がる立場にあります。
だからこそ、買取の話は檀家さんの側から出るのを待つ。
それが、お寺の信頼と買取を両立させる一番の近道です。
始める順番
まず、つなぐか買うかを決め、買うなら許可を取る主体を決めてから、扱う品と運び方を固めます。
- つなぐか、買うかを決める
相談の数が少ないうちは、つなぐ形から。
つなぐ先は、許可と決まりを守っているかで選びます。
- 買うなら、誰が許可を取るかを決める
住職個人か、別の会社か、宗教法人か。
宗教法人なら、規則の変更と所轄庁の認証が先です。
- 供養と買取の受け方を分ける
預かる品と買う品を、受ける場面から分けます。
書面と言い方を先に決めておきます。
- 扱う品を絞る
最初は、相場が公開されている貴金属から。金の刻印の見方と、買値の決め方をご覧ください。
- 本人確認と台帳の流れを作る
買い取るときは、相手の住所・氏名・職業・年齢の確認と、台帳への記録が要ります(古物営業法第15条・第16条)。
やり方は本人確認の方法に。
お寺の強みは、檀家さんとの長い付き合いです。
買取を足すとしても、その付き合いを壊さない順番で進めてください。
よくある質問
- お寺(宗教法人)でも、古物商許可は取れますか。
- 宗教法人法は、宗教法人が目的に反しない限り公益事業以外の事業を行えると定めています(第6条第2項)。
行う場合は、事業の種類と管理運営を規則に書き(第12条第1項第7号)、規則の変更について所轄庁の認証を受けます(第26条)。
古物商許可の申請は法人として行い、役員の氏名と住所を申請書に書きます(古物営業法第5条第1項)。
規則をどう扱うかは、規則の写しを持って管轄の警察署で確かめてください。
- 買取店を紹介するだけなら、許可は要りますか。
- お寺が品物を買い受けたり、代わりに売ったりしないのであれば、古物の売買をしていないので、古物商許可の話にはなりません。
ただし、檀家さんはお寺が勧めた先だから任せます。
紹介する先が古物商許可を持っているか、家に伺う買取の決まりを守っているかを確かめてから紹介してください。
- 檀家さんから無料でもらった品を売ってもいいですか。
- まったくの無償で引き取った物を売るだけなら、古物商許可は要らないとする県警の案内があります(愛知県警察・熊本県警察)。
一方で、相手に何らかの利益が生じる形は許可が要るとされています。
供養料を安くするなどの形が絡む場合は、管轄の警察署に実際のやり方を伝えて確かめてください。
- お焚き上げで預かった品の中に、金の指輪がありました。どうすればいいですか。
- 当窓口では、供養のために預かった品は売りに回さないことをお勧めしています。
値段が付く品だと気づいたら、扱う前に相続人の方に伝え、売るか、形見に残すか、供養するかを決めてもらってください。
供養で預かった品が売られていたと分かれば、お寺の信頼に関わります。
- 月参りの時に、檀家さんの家で買取の話をしてもいいですか。
- お寺の側から持ちかけるのは避けてください。
営業所以外の場所で品物を買う取引は訪問購入にあたり、頼まれていない人に家で買取を勧誘することは禁じられています(特定商取引法第58条の6第1項)。
消費者庁の通達では、ある品について頼まれて伺った場合でも、ほかの品の勧誘はできないとされています。
- 住職個人で許可を取るのと、宗教法人で取るのは、どちらがいいですか。
- 宗教法人で取る場合は、規則の変更と所轄庁の認証、責任役員の合意が先に要ります。
住職個人や別の会社で取る場合は、その手続きは要りませんが、宗教法人と売買の会計を分けて管理します。
どちらが合うかは、相談の数と、お寺の中の合意の取りやすさで決めてください。
税の扱いは顧問の税理士に確かめてください。
この記事は2026年10月10日時点の法令と公的機関の案内をもとに書いています。実際の手続きは、所轄庁と管轄の警察署にご確認ください。
出典:宗教法人法(e-Gov法令検索)(第5条・第6条・第12条・第18条・第26条)、古物営業法(e-Gov法令検索)(第2条・第3条・第5条・第15条・第16条)、特定商取引法(e-Gov法令検索)(第58条の4・第58条の6)、消費者庁「訪問購入」、消費者庁「特定商取引に関する法律等の施行について」(通達)、愛知県警察「古物営業 よくある質問」、熊本県警察「古物商許可」(手数料19,000円・概ね40日以内)(いずれも2026年10月10日確認)。
供養と売買を分ける運び方は当窓口の考え、「買取業界専門家・安場さんの回答」は2026年10月5日に当社が聞き取った内容です。