他業種からの参入
介護の事業所が、買取を始める。介護の時間と、買取の時間を分けます。
利用者の家に入る仕事をしていると、「これ、売れますか」と聞かれることがあります。施設への入居や退去でも、家財の行き先が話題になります。この記事は、訪問介護・ケアマネジャー・介護施設・介護タクシーの事業者に向けて、買取を足すときに先に決めることを書きます。
安場 達也古物査定の窓口 代表
買取業界歴15年以上。査定の現場から店舗の管理者、そして経営者まで、同じ道を順番に通ってきました。
北海道から沖縄まで、開業と店舗運営の支援実績があります。
大阪府公安委員会 古物商許可 第62229R076686号
公開 2026年10月10日
更新 2026年10月10日
先に結論安場さん
- 介護の事業者が利用者の品を買い取って売るには、古物商許可が要ります。
介護の指定や資格には、買取の許可は含まれていません
- 利用者の家で買う取引は、原則として特定商取引法の訪問購入です。
こちらから売るよう勧めることは禁じられ、書面と8日間のクーリング・オフがかかります
- 判断する力に不安がある方との売買は、あとで無効や取消しになることがあります。
ご家族か後見人を通します
- 当窓口のお勧めは、担当のヘルパーやケアマネジャーが自分で買わないこと。
買取は別の担当・別の契約・別の会計にして、介護と分けます
介護の仕事で、買取の話が出る場面
買取の話が出るのは、訪問中に利用者から聞かれる場面、施設への入居で家を引き払う場面、施設の退去や亡くなったあとの居室の場面の3つが中心で、場面ごとに売り主が違います。
まず、誰から買うことになるのかを場面ごとに分けます。
| 場面 | 売り主 | 先に確かめること |
| 訪問中に、利用者から「この指輪、売れますか」と聞かれる | 利用者ご本人 | ご本人が判断できる状態か。 ご家族に伝えてよいか |
| 施設への入居で、自宅を引き払う | 利用者ご本人(ご家族が手続きを代わることが多い) | 売るのはご本人か、代理の権限がある人か |
| 施設の退去、入居者が亡くなったあとの居室 | 亡くなった場合は相続人 | 相続人は誰か。 施設の物ではないので、施設が自分の判断で売ることはできない |
| 介護タクシーの車内で、「これを買ってくれないか」と言われる | 利用者ご本人 | 受け取る場所に決まりがある(車内では受け取れない。次の章) |
どの場面でも、相手は介護を受けている方か、そのご家族です。
頼られている立場で、お金のやり取りをすることになります。
ここが、ほかの業種から買取を始める場合と違う所です。
決まりを先に押さえておくと、信頼を損なわずに話を進められます。
許可が要る場面、要らない場面
利用者の品を買い取って売る、代わりに売るなら古物商許可が要り、無償で譲り受けた物を売るだけなら要らないと案内している県警があります。
古物営業法は、古物を売買する営業、委託を受けて売買する営業をするには、都道府県公安委員会の許可を受けるよう定めています(第2条・第3条)。
| やること | 古物商許可 |
| 利用者の品を買い取って、売る | 要る |
| 利用者に代わって売る(委託を受けて売る) | 要る |
| まったくの無償で譲り受けた物を売る | 要らないと案内する県警がある(愛知県警察・熊本県警察) |
| 利用者がご自身で売るのを、見守る・付き添う | 要らない |

無償で譲り受ける形にも、別の決まりがかかります
愛知県警察は、売り主に何らかの利益が生じる場合は許可が必要で、まったくの無償で引き取った物を売る場合は許可は要らない、と案内しています。
ただし、引き取った物が廃棄物にあたれば、運ぶにも処分するにも市区町村の一般廃棄物の許可(または委託)が要ります。
古物商許可は、その代わりになりません。
無許可で古物営業をした場合は、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(古物営業法第31条)。
受け取る場所にも決まりがあります。
古物商が古物商以外の人から買い受けるために品物を受け取れるのは、自社の営業所か、相手の住所・居所です(第14条)。
介護タクシーの車内や、送迎の途中の場所で品物を受け取って買うことはできません。
施設で暮らしている方から居室で受け取る場合の扱いは、管轄の警察署に確かめてから始めてください。
利用者の家に伺って買う場合は、行商の扱いも関わります。
許可証の携帯や、従業員に行かせるときの行商従業者証のことは、古物商の行商に書きました。
許可の取り方は古物商許可を個人で取るに、会社で取る場合は法人で古物商許可を取るにあります。
高齢のお客様との訪問購入の決まり
利用者の家で品物を買う取引は訪問購入にあたり、こちらからの勧誘の禁止、書面の交付、8日間のクーリング・オフ、その間の引渡しの拒絶が定められています。
消費者庁の特定商取引法ガイドで、事業者が守ることを確かめました(2026年10月10日確認)。
なお、自動車・家具・持ち運びが難しい家電・書籍などは、訪問購入の対象外の品として定められています(特定商取引法施行令第34条)。
こちらから勧めない
勧誘の要請をしていない人に、自宅などで売買の勧誘をすることも、勧誘を受ける気があるかを確かめることも禁じられています(第58条の6)。
介護の訪問中に、売れそうな品を見つけて声をかけるのは、この決まりに触れます。
書面を渡す
申込みを受けたとき、契約を結んだときに、品物の種類、買取価格、支払と引渡しの時期と方法、クーリング・オフのことなどを書いた書面を渡します(第58条の7・第58条の8)。
8日間は考え直せる
書面を受け取った日から数えて8日以内なら、申込みの撤回や契約の解除ができます(第58条の14)。
その間、品物を渡さなくてよい
8日の間、お客様は品物の引渡しを拒めます。
事業者は、品物を受け取るときにそのことを伝えなければなりません(第58条の9・第58条の15)。
施設への入居などで住まいを引き払うとき、お客様の側から来てほしいと頼まれた取引は、書面やクーリング・オフの決まりの多くがかからない形として定められています(特定商取引法施行令第37条、同施行規則第150条)。
それでも当窓口は、入居に伴う買取でも書面を渡し、8日間はお待ちする運び方をお勧めします。
ご本人とご家族が、あとから考え直せる余地を残すためです。
くわしい決まりは出張買取のクーリングオフにまとめています。

本人確認と記録も、買う側の義務です
古物商は、買い受けるときに相手の住所・氏名・職業・年齢を確かめ(第15条)、取引の内容を帳簿などに記録します(第16条)。
対価の総額が1万円未満の取引は、ゲームソフト・書籍など一部の品を除き、確認と記録の義務がかかりません(古物営業法施行規則第16条)。
介護の記録で住所や年齢を知っていても、それとは別に、買取の手続きとして確かめます。
進め方は
古物商の本人確認に書きました。
判断する力に不安がある方とは、取引しない
契約したときに判断する力がなかった方との売買は無効となり、成年後見を受けている方の売買は取り消されることがあるので、ご家族か後見人を通します。
民法は、意思表示をしたときに意思能力がなかった場合、その法律行為は無効と定めています(第3条の2)。
成年被後見人がした法律行為は、日用品の購入などを除き、取り消すことができます(第9条)。
介護の事業者は、利用者の体調や物忘れの具合を、ほかの業種より知っています。
その分、知っていたのに買ったと見られやすい立場です。
当窓口の考えですが、次のどれかに当てはまれば、その場では買いません。
- 同じ品について、話すたびに売る・売らないが変わる
- 品物の値段や、売ったあとのことを説明しても、伝わっている様子がない
- 成年後見人・保佐人・補助人が付いている(付いているか分からないときも含む)
- ご家族が、売る話を知らない
こうした場合は、ご家族や後見人に話を戻します。
介護の事業者にとって大事なのは、1回の買取より、介護の契約が続くことです。
介護の時間と、買取の時間を分ける
買取は介護保険のサービスではないので、担当者・契約・会計を介護と分けて運ぶのが安全です。
厚生労働省は、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合について通知を出しています(平成30年9月28日)。
訪問介護では、両者を時間で明確に区分すること、保険外サービスの内容や料金を文書で説明して同意を得ること、会計を介護保険の事業と区分することなどが示されています。
買取は、品物を買う取引で、この通知の言う保険外サービスとは形が違います。
それでも、介護と混ざると利用者が断りにくくなる点は同じです。
当窓口は、通知の考え方にならって、次のように分けることをお勧めします。
| 分けるもの | やり方(当窓口のお勧め) |
| 人 | 担当のヘルパーやケアマネジャーは買わない。 買取は別の担当者が伺う |
| 時間 | 介護の訪問中には査定しない。 日を改めて、ご家族の都合に合わせる |
| 契約 | 介護の契約書とは別に、買取の書面を作る |
| お金 | 買取代金は介護の利用料と相殺しない。 会計も分ける |
利用者から「これ売れますか」と聞かれたら、ヘルパーが答えるのは一言で足ります。
「担当の者から、ご家族にご連絡してよいですか」。
その場で値段を言わない、預からない、を事業所の決まりにしておきます。
査定は日を改めて、ご家族のいる場で。
介護の訪問とは分けます。
買取業界専門家・安場さんの回答
安場さんが挙げたのは、法律を把握しておくこと、依頼された品以外へ誘導しないこと、清潔感の3つです。
お客様の家に伺う買取で気をつけることを、買取業界の専門家である安場さんに聞きました。
買取業界専門家・安場さんの回答
お客様のご自宅に伺う買取で、気をつけることは何ですか。
出張買取は、お客様のご自宅に訪問するので、会話の中で、使っていない品物をいろいろお譲りいただくケースが多いです。
ただここは法律の観点があります。
依頼された品以外への誘導など、不招請勧誘にあたるものもあります。
法律違反をすると、古物商許可の取り消しなど、いろいろなデメリットがあります。
ご自宅に上がる時は、清潔感です。
靴、靴下、服装。
清潔感は意識してください。
これは大事です。
介護の仕事は、すでに利用者の家に上がる仕事です。
会話の中で品物の話が出やすいのも、介護の事業者ならではです。
だからこそ、依頼された品だけを、決まりどおりに扱います。
始める順番
事業所の決まりを先に作り、古物商許可を取り、訪問購入の書面を用意してから、貴金属など相場が公開されている品に絞って始めます。
-
事業所の決まりを作る
担当のヘルパー・ケアマネジャーは買わない。
訪問中に値段を言わない。
品物を預からない。
聞かれたときの一言を、全員でそろえます。
-
古物商許可を取る
会社で取る場合は、役員全員分の書類が要ります。
手数料は19,000円、審査は40日前後です。
-
訪問購入の書面と、本人確認の手順を用意する
書面の項目、8日間の伝え方、本人確認と帳簿の付け方を、伺う前に決めておきます。
-
ご家族と話す形にする
査定は、ご家族か後見人のいる場で。
判断する力に不安がある方からは、その場で買いません。
-
扱う品を、貴金属などに絞る
金・プラチナは相場が公開されていて、値段の根拠を見せやすい品です。
見分け方は金の本物と偽物に書きました。
順番を守ると、利用者にもご家族にも、説明できる形になります。
説明できる形でやっていることが、介護の事業所の信用を守ります。
よくある質問
- ヘルパーが、訪問先の利用者から品物を買い取ってもいいですか。
- 買い取って売るなら、事業所として古物商許可が要ります。
そのうえで、利用者の家で買う取引は原則として特定商取引法の訪問購入にあたり、こちらから売るよう勧めることは禁じられています。
当窓口は、担当のヘルパーが自分で買うことはお勧めしません。
買取は別の担当者が、日を改めて、ご家族のいる場で行う形をお勧めします。
- 介護の事業所が、利用者から無償でもらった物を売るのに許可は要りますか。
- まったくの無償で譲り受けた物を売る場合は、古物商許可は要らないと愛知県警察や熊本県警察が案内しています。
売り主に何らかの利益が生じる場合は許可が必要です。
また、引き取った物が廃棄物にあたれば、市区町村の一般廃棄物の許可などが別に要ります。
迷う場合は管轄の警察署に確かめてください。
- 施設に入居する利用者の家の物を、介護の事業者が買い取ることはできますか。
- 古物商許可があれば、ご本人や代理の権限がある方から買い取れます。
お客様の家で買う取引は、原則として訪問購入にあたります。
住まいを引き払う際にお客様の側から頼まれた取引は、書面やクーリング・オフの決まりの多くがかからない形として定められていますが、当窓口は書面を渡し、8日間お待ちする運び方をお勧めします。
- 施設で亡くなった入居者の居室に残った物は、施設が売ってもいいですか。
- 施設の物ではないので、施設が自分の判断で売ることはできません。
亡くなった方の物は相続人に引き継がれます。
相続人に引き渡すか、相続人の同意を得て、許可のある業者に査定を頼む形にします。
扱いは入居契約の内容でも変わるため、迷う場合は弁護士等に確認してください。
- 認知症の利用者から「売りたい」と言われたら、どうすればいいですか。
- その場では買わず、ご家族か後見人に話を戻します。
民法では、意思表示をしたときに意思能力がなかった場合、その法律行為は無効とされます。
成年被後見人がした法律行為は、日用品の購入などを除いて取り消すことができます。
- 介護タクシーの車内で、品物を買い取ってもいいですか。
- できません。
古物営業法では、古物商が古物商以外の人から買い受けるために品物を受け取れるのは、自社の営業所か、相手の住所・居所とされています(第14条)。
車内や送迎先の場所では受け取れません。
この記事は2026年10月10日時点の法令と公的な案内をもとに書いています。古物営業の許可・受け取る場所・本人確認・帳簿・罰則は古物営業法第2条・第3条・第14条・第15条・第16条・第31条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000108)、無償で引き取った物の販売の扱いは愛知県警察の古物営業のよくある質問(https://www.pref.aichi.jp/police/shinsei/sonota/qanda.html)と熊本県警察の案内(https://www.pref.kumamoto.jp/site/police/128250.html)、訪問購入の決まりは消費者庁の特定商取引法ガイド「訪問購入」(https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorpurchases/)と特定商取引法施行令第34条・第37条・同施行規則第150条、1万円未満の取引の扱いは古物営業法施行規則第16条、意思能力と成年後見は民法第3条の2・第9条、介護保険サービスと保険外サービスの組み合わせは厚生労働省老健局の通知(平成30年9月28日)、申請手数料(19,000円)と審査期間(40日前後)は愛知県警察の案内(https://www.pref.aichi.jp/police/shinsei/sonota/kobutsu/kobutusyoukyokasinsei.html)によります(いずれも2026年10月10日確認)。お客様の家での取引の注意点は、買取業界専門家・安場さん(古物査定の窓口)の回答と当窓口の考えです。許可の要否は管轄の警察署に、個々の契約の扱いは弁護士等にご確認ください。