他業種からの参入
宝石店・時計店が、買取を始める。新品の目利きでは、足りない所があります。
宝石、時計、貴金属、眼鏡。品物のことはよく知っていて、お客様との付き合いもあり、店もあります。買取を足すと、その強みがそのまま使えます。ただし、新品を見る目と、持ち込まれた中古を見る目は別の仕事です。許可と区分、見る所の違い、値付け、下取りとの違いまでを順に書きました。
安場 達也古物査定の窓口 代表
買取業界歴15年以上。査定の現場から店舗の管理者、そして経営者まで、同じ道を順番に通ってきました。
北海道から沖縄まで、開業と店舗運営の支援実績があります。
大阪府公安委員会 古物商許可 第62229R076686号
公開 2026年10月5日
更新 2026年10月5日
この記事は業者向けです。
宝石店・ジュエリー店・時計店(修理を含む)・メガネ店など、すでに貴金属や時計を扱っている小売店の方に向けて書いています。

佐藤さん(開業を検討中)宝石店や時計店なら、そのまま買取も始められますか?
先に結論安場さん
- 新品の販売だけなら古物商許可は要りません。
お客様の品を買い取るなら、許可が要ります
- 宝石・貴金属・時計・眼鏡は、3番の時計・宝飾品類に入ります
- 強みは、品物の知識・お客様との信頼・店舗がすでにあること
- 注意は、新品の目利きと、中古の本物と偽物の見極めは別ということ
- 買取の値付けは、売り先の値段から逆算します
- 下取りも、場合によっては古物の取引です。
条文で確かめられる範囲と、警察署に確かめる範囲を分けて書きました
すでに持っている強み
買取を新しく始める人が、最初に苦労するのは品物を持ってくる人に会うことです。
宝石店・時計店・メガネ店は、そこがすでにできています。
品物の知識
石、地金、時計の仕組み、眼鏡のつくり。
用語も構造も、新しく覚える必要がありません。
お客様との信頼
買っていただいた方、修理を任せてくださる方。
「あの店なら」と思ってもらえる土台があります。
店舗
人が来て、品物を見せられて、安心して話せる場所。
店があるだけで、お客様は安心します。
手入れと再販の力
磨く、直す、整える。
買い取った品を店の商品にする工程を、すでに持っています。
店頭で「この店に売ろう」と決める理由について、安場さんはこう答えています。
買取業界専門家・安場さんの回答
店頭買取で、お客様が「この店に売ろう」と決める決め手は何ですか。
結局は、スタッフの営業力や愛嬌、つまり人柄です。
人柄が、この買取ビジネスの肝になります。
長くお客様と接してきた店には、すでに積み上げたものがあります。
足りないのは、そこに持ち込まれる中古の品を見る目と、許可です。
新品を並べる店と、中古を見る店。
同じ時計でも、見る所が変わります。
買取に要る許可と、品目の区分
先に、法律で決まっていることを書きます。
古物営業法の条文(e-Gov法令検索、2026年10月5日に確認)では、次のとおりです。
| 論点 | 条文で確かめられること |
| 新品の販売だけ | 古物は、一度使用された物品、使用されない物品で使用のために取引されたもの、これらに幾分の手入れをしたもの(第2条第1項)。 新品を売るだけなら、古物の取引ではありません |
| 未使用でも古物になる場合 | 使われていなくても、使用のために取引された品は古物に入ります。 お客様が買ったまま使っていない品を買い取る場合も、古物の買取です |
| 許可が要る営業 | 古物を売買する営業をするには、公安委員会の許可が要ります(第3条)。 買取だけでなく、買い取った品を売ることも含みます |
| 委託販売 | 委託を受けて売買することも、古物営業の定義に入っています(第2条第2項) |
許可の取り方と費用は、大阪府警察の案内では、手数料が19,000円、申請から概ね40日以内に許可か不許可かの連絡があります。
詳しくは古物商許可の取り方に書きました。
すでに許可をお持ちなら、扱う区分に3番が入っているかを確かめるところからです。
宝石・貴金属・時計・眼鏡は、3番にまとまっています
古物営業法施行規則の第2条では、古物の区分が13に分かれています。
そのうち3番が「時計・宝飾品類」で、条文に書かれている中身は、時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類などです。
宝石店・時計店・メガネ店が普段扱っている品は、ほとんどがここに入ります。
ブランドバッグのような革製品は別の区分(11番の皮革・ゴム製品類)です。
区分の見方と、あとから足す方法は古物商の13品目で整理しています。

区分の線引きで迷う品は、警察署に聞いてください
施行規則の区分に、金属くずや地金だけを指す名前の区分はありません。
貴金属類は3番と書かれていますが、くず金や地金がどの区分で扱われるかは、条文の文言だけでは言い切れません。
扱う前に、管轄の警察署に確かめるのが確実です。
区分を足すときは変更届です。
区分は許可申請書の記載事項(第5条第1項第3号)で、変更があったときは届け出ます(第7条第2項)。
施行規則では、変更の日から14日以内とされています。
新品と中古で、見る所が違う
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
新品を扱うとき
仕入れ先は、メーカーや問屋などの決まったルート。
品物の素性は、最初から分かっています。
見るのは、状態と価格です。
中古を買い取るとき
持ち込む方は、一般のお客様。
素性は、話と品物から自分で確かめるしかありません。
見るのは、本物かどうか、手が加わっていないか、そして相場です。
新品の目利きで磨かれるのは、正規の品を見分ける目です。
買取で必要になるのは、正規ではないものを疑う目です。
| 中古で起きること | どこを見るか |
| 偽物が混じる | 外装だけでなく、型番と製造番号の組み合わせ、内部まで。 くわしくはロレックスの本物と偽物 |
| 部品が交換されている | 本物の時計の一部だけが、別の部品に替わっていることがあります。 外から見ただけでは分かりにくい部分です |
| 改造された品 | 元の仕様と違う加工が加えられた品。 元の状態を知らないと、そのまま買ってしまいます |
| 刻印が偽造される | 刻印は材質の申告であって、保証ではありません。 くわしくは金の本物と偽物 |
| 石の見分け | 石は、天然か、合成か、模造かで値段が大きく変わります。 くわしくはダイヤモンドの本物と偽物 |
ここでも安場さんの回答を、そのままお伝えします。
安場さんは、買取で実際に損をした経験から、次のように話しています。
買取業界専門家・安場さんの回答
一番損をした買取は、何ですか。
やはり、偽物をつかんだことです。
正直、ここでお伝えできないような失敗も多くしました。
損金の額もかなり大きいです。
買取事業で偽物をつかむことは、大きな損失になります。
買取業界専門家・安場さんの回答
ブランド品の偽物は、どれくらい持ち込まれますか。
店頭を構えれば、持ち込みの頻度は高くなります。
出店エリアでも変わります。
都心部・都会は多く、郊外は少ない印象です。
出張買取は店頭買取に比べると少ないですが、それでもゼロではありません。
注意が必要です。
小さい店舗を狙ってくる悪い人たちもいます。
頻度は、安場さんの印象で、数字ではありません。
ただ、店を開けて人が来る形は、持ち込みも多くなる形です。
買取を足した店は、お客様だけでなく、偽物を持ち込む人にとっても、入りやすい店になるということです。

偽物だけが、買取のリスクではありません
買い取った古物に盗品が混じっていた場合、被害者は古物商に対して、盗難から1年以内なら、無償で返すよう求められます(第20条)。
盗品の疑いがあれば、古物商は直ちに警察官へ申告しなければなりません(第15条第3項)。
本人確認と台帳は、ここを守る仕組みです。
値付けと売り先
新品は、メーカーの定めた価格や仕入れ値をもとに売値を決めます。
買取は、順番が逆です。
- 売り先を決める
買い取った品を、誰にいくらで売るのか。
店頭で自分が売るのか、古物市場に出すのか、貴金属なら精錬業者や地金商に出すのか。
- 売り先の値段を調べる
金・プラチナなら相場が公開されています。
時計や宝石は、同じ品がいくらで取引されているかを調べます。
- そこから、買値を逆算する
売り先の値段から、手入れの費用と店の取り分を引いた額が、お客様にお出しできる上限です。
新品を売るときは、売る前に値段が決まっています。
買取は、買ったあとの売り先の値段が動くところが違います。
逆算のやり方と、相場の調べ方は買取価格の決め方にまとめました。
売り先が決まらないうちは、買わないでください
値段がつけられないからです。
いくらで売れるか分からない品を、いくらで買うかは決められません。
本人確認と台帳は、買取のたびに要ります
古物を買い取るときは、相手方の住所・氏名・職業・年齢の確認が要ります(第15条第1項)。
買い取ったときは、取引の年月日、品目と数量、特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢などを台帳に記録します(第16条)。
台帳は、最後の記載から3年間の保存です(第18条)。
やり方は本人確認の方法と古物台帳の書き方に書いています。
新品の販売にはなかった作業なので、店の流れに組み込むところから考えてください。
下取りと買取の違い
新品を売るときに、古い品を引き取る。
これが下取りです。
「下取りは、買取とは別だから許可は要らない」と考えがちですが、条文はそこまで単純ではありません。
条文で確かめられること
古物営業法の第2条第2項第1号は、古物営業から「古物を売却することのみを行うもの」と、「自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの」を除いています。
第15条第2項第2号でも、自己が売却した物品を、その売却の相手方から買い受ける場合は、本人確認が要りません。
台帳も、この場合は記録の対象から外れます(第16条)。
条文の文言で、除かれていると読めるもの
自分の店が売った品を、その品を買ったお客様本人から、買い戻す・引き取るだけの取引。
ただし「のみ」とあるので、ほかの古物も買い受けている店は対象外です。
古物の買取にあたると読めるもの
よその店で買われた品の引き取り。
お客様の持ち込みを、新品の購入とは関係なく買い取ること。
この場合は、許可・本人確認・台帳が要ります。
実際の当てはめは、警察署に確かめてください
自店で売った品かどうかをどう確かめるか、値引きという形で引き取った場合にどう扱うか、といった細かい運用は、公的な資料だけでは確かめられていません。
下取りを始める前に、管轄の警察署の生活安全課などへ、店の実際のやり方を伝えたうえで確認してください。
始める順番
- 許可と区分を確かめる
許可がなければ申請(手数料19,000円、概ね40日。大阪府警察の案内)。
あれば、3番の時計・宝飾品類が入っているかを確かめます。
- 最初に買う品を絞る
全部を一度に始めず、相場が公開されていて、根拠の取りやすい品から。
たとえば貴金属です。
- 売り先を決める
買う前に、買った品を誰に・どこで売るかを決めます。
ここが決まると、買値が計算できます。
- 本人確認と台帳の流れを作る
店頭で、誰が、どの書類を、どの順に確認するか。
台帳は紙か電子か。
最初の1件の前に決めておきます。
- 買わない基準を決める
保証書や箱がそろっているもの。
説明に無理がないもの。
判断がつかない品は買わないと決めておくと、損は小さくなります。
- 中古を見る目を作る
偽物・部品交換・刻印の偽造は、本物と偽物を並べて、手に取ることでしか身につきません。
買ってしまった後の損の出方は偽物を買ってしまったらにまとめています。
新品の目利きで積み上げてきたものは、そのまま残ります。
そこに、中古を見る目と、買値の逆算が加わる。
買取を足すとは、そういうことです。
よくある質問
- 宝石店や時計店が、お客様の品を買い取るには許可が要りますか。
- 要ります。
新品を売るだけなら古物の取引ではありませんが、お客様から品物を買い取ることは、古物を買い受ける営業にあたり、公安委員会の許可が要ります(古物営業法第2条・第3条)。
使われていなくても、一度お客様が使用のために取引した品は古物に入ります。
- 時計・宝石・眼鏡は、どの区分ですか。
- 古物営業法施行規則の第2条で、3番の時計・宝飾品類です。
条文には、時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等と書かれています。
革のバッグは11番の皮革・ゴム製品類で、別の区分です。
くず金や地金だけの扱いがどの区分になるかは、管轄の警察署にご確認ください。
- 新品の目利きがあれば、中古の買取もできますか。
- 新品の目利きは、正規の品を見分ける力です。
中古の買取では、偽物、部品交換、改造、刻印の偽造など、正規ではないものを疑う目が別に要ります。
買取業界専門家の安場さんも、一番損をしたのは偽物をつかんだことだと答えています。
判断がつかない品は買わない、という基準を先に決めておくと安全です。
- 買取の値段は、どう決めますか。
- 売り先の値段から逆算します。
買った品を店頭で売るのか、古物市場に出すのか、貴金属なら精錬業者や地金商に出すのかを先に決め、その値段から手入れの費用と店の取り分を引いた額が、お客様にお出しできる上限です。
売り先が決まらないうちは、買値も決められません。
- 下取りでも、古物商許可は要りますか。
- 場合によります。
条文では、自己が売却した物品を、その売却の相手方から買い受けることのみを行うものは、古物営業から除かれています(第2条第2項第1号)。
一方、よその店で買われた品を引き取る場合や、持ち込まれた品を買い取る場合は、古物の買受けにあたります。
実際の当てはめは、管轄の警察署にご確認ください。
- 本人確認と台帳は、買取のたびに必要ですか。
- 古物を買い受けるときは、相手方の住所・氏名・職業・年齢の確認と、台帳への記録が要ります(第15条・第16条)。
自己が売却した物品をその相手方から買い受ける場合は、確認の対象外です(第15条第2項第2号)。
台帳は、最後の記載から3年間の保存です(第18条)。
この記事は2026年10月5日時点の法令と公的機関の案内をもとに書いています。
運用は都道府県によって異なる場合があります。実際の手続きは、管轄の警察署にご確認ください。
出典:古物営業法(e-Gov法令検索)(第2条・第3条・第5条・第7条・第15条・第16条・第18条・第20条)、古物営業法施行規則(e-Gov法令検索)(第2条・第5条)、大阪府警察「古物商許可申請」(手数料19,000円・申請から概ね40日以内)。
「買取業界専門家・安場さんの回答」は、2026年10月5日に当社が聞き取った内容で、偽物の持ち込み頻度は安場さんの印象です。